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【大傑作じゃないか】『フィリッピーナを愛した男たち』が素晴らしかった

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先日、『フィリッピーナを愛した男たち』(1992年)という玉置浩二主演のドラマを見ました。

ずいぶん前のドラマですが、夜の世界で生きるフィリピーナと日本人男性の関係をエンターテインメント性を失うことなくリアルに描いた大傑作でした。

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ドラマを知った経緯

フィリピン関連の本や映画をいろいろ見ているうちにこのドラマについて偶然知りました。テレビ放送向けに作られたドラマなので肩肘張らずに軽い気持ちで見始めたらぐいぐい引き込まれ気付いたら食い入るようにして見ていました。

ちょっとびっくりするぐらいの傑作だったので今回紹介しようと思いました。

ビデオやDVD化はされておらずリアルタイムでテレビで見た人以外はなかなか目にする機会がないため「隠れた名作」と言えるかもしれません(※現在はオンラインで公開されています)。

フィリッピーナを愛した男たちの作品情報

タイトル フィリッピーナを愛した男たち
公開 1992年
監督・脚本 水島総
原作 久田恵『フィリッピーナを愛した男たち』
作品紹介 原作の久田恵『フィリッピーナを愛した男たち』で登場するエピソードをひとつにまとめたフィクションドラマです。フジテレビの金曜ドラマシアターで放送されました。

フィリッピーナを愛した男たちの動画配信情報

監督の水島総さんが運営に携わるチャンネル桜のオフィシャルアカウントで動画が公開されています。

フィリッピーナを愛した男たちの登場人物(キャスト)

亀村敏夫(玉置浩二) 布団屋の営業マンとして働くも借金がかさみ奥さんに逃げられる。
ルビー(ルビーモレノ) フィリピンに家族を残し日本に出稼ぎに来ている。
亀村和江(中村玉緒) 福島で一人暮らす敏夫の母。
山根玲子(大谷直子) マニラでパブを経営する日比ハーフの女将。
篠崎春二郎(高田純次) 玲子の元恋人のミュージシャン。

フィリッピーナを愛した男たちのストーリー(あらずじ)

借金がかさみ妻に離婚を告げられた少し冴えない男の敏夫はフィリピンパブでルビーと出会う。

敏夫はサラリーマンが肌に合わず勤めていた会社を辞めてしまうもルビーに入れ込み愛を育んでいく。

そんな折、ルビーが別の男とホテルに入っていくのを目撃してしまう。

激高した敏夫は自分の立場を理解してもらえないルビーと言い争いになるも結婚を決意。店に多額のお金を払いルビーの仕事を辞めさせフィリピンに帰らせることに。

敏夫はルビーを追ってフィリピンへ向かうも騙されていたことに気づく。

ルビーを探し出した敏夫はマニラで一緒にカラオケクラブを経営するも密告されすべてを失い無一文に・・・。

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フィリッピーナを愛した男たちの解説と感想

ここからは少しネタバレになります。

1992年製作という時代背景を考えると、当時の夜の世界で生きるフィリピン人女性と日本人男性の関係と言えば、日本に騙されてやって来て搾取されるフィリピン人女性とそれに加担する日本人男性、あるいは逆にしたたかにお金を騙し取るフィリピン人女性と騙される日本人男性といったものが世間一般のイメージだったのではないでしょうか(今でもそうかもしれません)。

原作の著書では「被害者」と「加害者」、「騙す者」と「騙される者」といったステレオタイプな二元論で語られてきたフィリピン人女性と日本人男性の関係のありようの中に、様々なカップルへのインタビューを通して新たな関係性を見出そうとしていますが、ドラマでは敏夫とルビーの物語を通してそれらが描かれています。

敏夫とルビーの二人も最初から理解し合っていたわけではありません。

日本人の敏夫からすればフィリピン人は「お金を払えば何でもする」「お金を騙し取る」、フィリピン人のルビーからすれば「何でもお金で解決しようとする」「浮気者」と、それこそ互いに互いをステレオタイプな見方をしていた二人が徐々に理解を深めていき人生を共に歩んで行くことを決意するのです。

役者の演技が秀逸

ドラマに出演している役者さんたちの演技は秀逸でした。

とりわけ主演の玉置浩二さんの演技は素晴らしかったです。奥さんに逃げられ仕事も辞めてしまいその心の隙間を埋めるようにフィリピン人女性にはまっていく不器用で冴えない男を非常にリアルに演じています。

中村玉緒さんが演じる田舎で一人暮らす敏夫の母の存在も感傷を誘い物語に奥行きを出していますね。当時の時代背景なども今見ると余計に感傷的な感じもします。

最終的にはハッピーエンドで終わるのですが、敏夫がフィリピンで孤独と絶望感を味わうシーンでは前半の雰囲気とは一変し玉置浩二さんの演技も一段と迫力を増していき見応え十分です。

印象に残った場面や会話

前半部分のハイライトのひとつとも言えるのが次のシーンです。

他の男とホテルに行ったことに腹を立てた敏夫が「俺は客の一人か?」とルビーに問い質すと、

違う。違うよ。違う。でも私お金欲しいよ。私のママ病気。腎臓病透析とても高いよ。お金かかる。フィリピン仕事ない。ファミリー食べるものない。私ファミリーのため働くよ。ファミリー早くお金待ってるよ。私ファミリーのためなんでもする。なんでもできるよ。私悪くない。悪くないよ。真剣なビジネスよ。

続けて

日本の男、私に好き好き言う。お店終わったら送る。ホテル行く。私ノーノーね。男お金あげる。どうぞどうぞって。私少しサービスね。どっちが悪いか。私悪くないよ。悪くない。悪くないよ。ファミリーと神様だけわかってくれる。だからトシオも分かってよ。

と、泣きながら訴えかけます。

客として入れ込む日本人男性とフィリピーナのすれ違いを描いた印象的な台詞でした。

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物語の後半はルビーを追って向かったフィリピンを舞台に展開していきますが、敏夫がすべてを失ってからが面白いですね。

フィリピンでの経験が豊富なパブの女将・玲子が放った次の言葉はなかなかの名言ではないでしょうか。

何もかもなくして最後に残ったのが本当の自分だって分かるの。それからさフィリッピンは。

そして自暴自棄になり酒に溺れている敏夫のもとに料理を持ってきたルビーが互いに泣き合いながらかけたのが次の言葉でした。

トシオお金ない。でもやさしいよ。トシオやっとフィリピン人なったよ。フィリピン人と同じ。トシオ、バハラナね。バハラナ。バハラナ、ドントマインド(Don't Mind)。フィリピンに住むノーマニー、ノージョブでしょ。でも、神様、友達、ファミリーたくさんいるよ。フィリピンいつも笑ってバハラナよ。

バハラナ(BAHALA NA)はタガログ語で「何とかなるさ」という意味の言葉。

どん底に落ちた敏夫がフィリピン人と同じ境遇に陥ることで互いの立場の違いを乗り越えて理解し合うこのシーンは感動的でした。

おわりに

この映画の評価

このドラマはフィリピンと何らかの関わりのある人(たとえ女性でも)が見たら共感できる部分がきっとあると思います。

またそうでない人が見ても随所にくすっと笑いを誘うようなシーンが盛り込まれていたり何よりストーリー自体が面白いので楽しく見れるはずです。

1992年放送と今から約30年近くも前の作品ですが今見てもリアルです。

フィリピン人女性と日本人男性との関係を描いた作品としては最高クラスと言っていいほど完成度が高いと感じる作品でした。

P.S.

ルビー役でこのドラマに出演しているフィリピン人女優のルビーモレノに興味があるという人は、ぜび『月はどっちに出ている』という映画を見てみてください。素晴らしい演技をしています。

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